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萩焼(山口県)とは?

萩焼(ふりがな: はぎやき、英語: Hagi Ware、仏語: Céramique de Hagi)は、山口県萩市で作られる伝統的な陶器です。16世紀後半に誕生し、茶道具として特に愛用されています。特徴的な土の温もりを感じさせる風合いと、素朴で柔らかな釉薬の色合いが魅力です。萩焼の「七化け」と呼ばれる、使うほどに色合いが変化する特性は、茶人たちに広く愛されています。現在では、日本国内外で高級陶器として評価されています。

萩焼の歴史と特徴

萩焼の歴史は、16世紀末、朝鮮半島から渡来した陶工たちが日本に技術を伝えたことに始まります。文禄・慶長の役(1592-1598年)の際に、毛利輝元が陶工たちを山口県萩に招き、茶陶の制作を奨励しました。これにより、朝鮮陶磁の影響を受けた萩焼が誕生し、茶の湯文化とともに発展してきました。

萩焼の特徴は、その素朴さと自然な風合いにあります。赤土や白土といった地元の素材を使用し、厚みのある器が多く作られます。そのため、手にした際の温かみ質感が特徴的で、人肌に馴染む感触が茶道具として高く評価されています。また、釉薬には白釉、灰釉、藁灰釉などの柔らかな色調が使われ、焼成後の割れや貫入(かんにゅう)が独特の表情を生み出します。

特に、萩焼の代表的な特性である「七化け」は、使用するほどに色合いが変化していく現象で、これが愛着を持って長く使われる理由の一つです。茶碗や花器など、使用するたびに器が水分を吸収し、少しずつ表面の色合いが変化していくため、時間とともに個性が増す陶器として茶人や陶芸愛好者から絶大な支持を受けています。

萩焼は当初、茶道具として発展しましたが、江戸時代には藩窯としての地位を確立し、萩藩からの保護を受けながら発展を続けました。毛利家が茶道に深く関与していたことも、萩焼の品質向上発展に寄与しました。現在では、茶道具に加えて、日常使いの食器や花器なども作られており、その伝統と現代性が調和した魅力が多くの人に愛されています。

また、萩焼は手作り温もりを大切にし、一点一点異なる表情を持つため、「同じものがない」という個性を持っています。特に、手作りの不均一さが逆に魅力として捉えられ、萩焼の器を使うことが茶道や日常の生活に特別な趣を加えます。

代表的な窯や工房

1. 大内陶器

大内陶器は、江戸時代から続く萩焼の伝統を守り続ける老舗窯元です。茶道具を中心に、伝統的な技法を用いながらも、現代の感覚を取り入れた作品が高く評価されています。

2. 吉賀大眉窯

吉賀大眉窯は、萩焼の美学を追求し、素朴でありながらも優雅な作品を生み出す窯元です。特に茶碗や花器において「七化け」の美しさを堪能できる作品が多いです。

3. 白井窯

白井窯は、自然素材にこだわり、手作りの風合いを大切にする工房です。萩焼の温かみを感じる日常使いの食器が特徴で、生活に寄り添う器作りが評価されています。

現在の世界的な評価

萩焼は、日本の茶道文化と深く結びついており、その素朴で温かみのある美しさが国内外で高く評価されています。特に「七化け」という独特の変化を楽しむ特性は、日本国内外の茶人に人気があり、美術館やギャラリーでも展示されることが増えています。萩焼は、日本の伝統陶芸の一つとして、時間とともに深まる美が世界中で評価されています。


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