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金沢箔(石川県)とは?

金沢箔(ふりがな: かなざわはく、英語: Kanazawa Gold Leaf、仏語: Feuille d'or de Kanazawa)とは、石川県金沢市で製作される金箔や銀箔の総称で、非常に薄く加工された金属の箔を指します。金沢箔は、その美しさと耐久性から、伝統工芸品や装飾品、建築材料として広く使用されています。金箔の生産においては、金沢が全国シェアのほとんどを占めており、国内外で高い評価を受けています。

金沢箔の歴史と特徴

金沢箔の起源は、安土桃山時代に遡ります。この時期、豊臣秀吉が豪華絢爛な城や寺院を建て、その装飾に大量の金箔が使用されました。しかし、当時の金箔製造は京都や奈良が中心で、金沢での生産は行われていませんでした。金沢での金箔製造が本格化したのは、江戸時代に入ってからです。

金沢藩の3代藩主である前田利常が、金箔の製造技術を藩内に取り入れたことがきっかけです。彼は、京都や奈良から技術者を招き、金箔製造の技術を金沢に伝えました。その後、金沢は金箔製造の一大産地となり、特に加賀百万石の文化が花開く中で、金沢箔は茶道具や仏具、工芸品などに幅広く使用されるようになりました。

金沢箔の最大の特徴は、その極めて薄い仕上がりにあります。1万分の1ミリメートルという非常に薄い箔は、繊細な技術によって作り上げられ、その美しさが高く評価されています。金箔を薄く延ばすためには、熟練した職人の技術が不可欠であり、金沢にはその伝統が脈々と受け継がれています。箔の表面には光沢があり、豪華な装飾として建築物や工芸品、仏像、漆器などに使用されます。

金沢箔は、純金だけでなく、銀やプラチナなどの金属からも作られ、それぞれ異なる美しさを持っています。金箔は豪華な輝きを持ち、銀箔は上品で落ち着いた雰囲気を醸し出します。また、銀箔に硫化処理を施すことで、独特の風合いを持つ「黒箔」が生まれます。これにより、さまざまな表現が可能になり、金沢箔は幅広い用途に使用されてきました。

さらに、金沢箔は単なる装飾にとどまらず、耐久性にも優れています。薄くて柔軟なため、曲面にも容易に貼り付けることができ、さまざまな形状の表面に対応できます。近年では、伝統工芸品や美術工芸品のみならず、現代的なインテリアやファッション、さらには食品の装飾にも使用され、その用途は広がり続けています。

代表的な工房

1. 箔一(はくいち)

箔一は、金沢箔を現代に引き継ぐ代表的な企業で、金箔を使った伝統工芸品やインテリア用品を展開しています。特に化粧品や食品への金箔の応用で知られており、伝統と革新を融合させた商品が特徴です。

2. 安江金箔工芸

安江金箔工芸は、伝統的な技法を守りながらも、現代的なデザインを取り入れた製品を手がける工房です。金箔を使用した漆器や屏風などの工芸品が人気で、国内外で高い評価を受けています。

3. 金箔屋さくだ

金箔屋さくだは、伝統的な手法を用いた金箔製品を製作しており、その精緻な技術が特徴です。観光客向けに体験型ワークショップも提供しており、金箔貼りの技術を広く伝える活動も行っています。

現在の世界的な評価

金沢箔は、国内外で高く評価され、特に伝統工芸品としての価値が認められています。日本国内では、寺院や神社の装飾に使用されるほか、茶道具や漆器などにも広く利用されています。さらに、金沢箔は国際的にも美術品やインテリアデザインとしての評価が高まり、現代アートや高級ブランドにも取り入れられています。また、食用金箔としての利用も広がり、料理やデザートに豪華さを加える要素として人気です。金沢箔は今後も、その伝統と革新を融合した美しさで、世界中の人々を魅了し続けるでしょう。


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