head_img_slim
日本の伝統工芸TOP > 伝統工芸品辞典 > 九谷焼(石川県)

九谷焼(石川県)とは?

九谷焼(ふりがな: くたにやき、英語: Kutani ware、仏語: Porcelaine de Kutani)は、石川県加賀地方で作られる伝統的な陶磁器で、色鮮やかな上絵付けが特徴です。17世紀に誕生し、江戸時代を通じて発展してきました。特に、五彩と呼ばれる鮮やかな赤、青、緑、黄、紫の色使いが特徴で、豪華で力強い絵付けが世界的にも評価されています。今日、九谷焼は伝統と現代的なデザインが共存する陶芸品として愛されています。

九谷焼の歴史と特徴

九谷焼は、1655年頃、加賀藩の支藩である大聖寺藩(現在の石川県加賀市)で誕生しました。九谷村で採掘された良質な陶土を用いて、古九谷と呼ばれる初期の九谷焼が制作されました。この初期の九谷焼は、五彩と呼ばれる鮮やかな色彩を使った大胆で力強いデザインが特徴で、中国の明・清時代の陶磁器から影響を受けています。

しかし、約50年後、九谷焼の生産は突如として中断しました。その理由は明確には分かっていませんが、藩財政の悪化や技術者の流出が原因とされています。その後、19世紀初頭再興九谷として復活しました。再興九谷では、金沢を中心に技術者たちが集まり、新たな技法が導入されました。特に色絵九谷と呼ばれる技法が発展し、赤、緑、黄、青、紫の5色を主に用いた色鮮やかな装飾が特徴となりました。

江戸時代後期から明治時代にかけて、九谷焼は国内外で高く評価されるようになり、1873年のウィーン万国博覧会などで世界に紹介されました。これにより、輸出用の九谷焼も多く制作され、西洋の需要に応じたデザインも登場しました。一方で、伝統的な技法も守られ、九谷焼は芸術的価値と実用性を兼ね備えた陶磁器として広まりました。

九谷焼の特徴は、上絵付けによる鮮やかな色彩と大胆なデザインにあります。絵画的な要素が強く、自然や動物、人物が細密に描かれたものが多く見られます。また、伝統的な技法として五彩手青手赤絵細描といった技法があり、それぞれ異なる色彩や描写方法が使われています。

現代では、伝統的なデザインを守りつつ、現代アートやインテリアにマッチした九谷焼も多く制作され、日常生活の中でも使える陶磁器として人気を集めています。食器や花器などの実用品から、芸術作品としての九谷焼まで、幅広いバリエーションがあります。

代表的な窯・工房

1. 九谷光仙窯

九谷光仙窯は、伝統的な九谷五彩を継承しながらも、現代的なデザインを取り入れている窯元です。特に、上絵付けの鮮やかな発色独自の美的センスで高く評価されています。

2. 吉田屋窯

江戸時代後期に吉田屋窯によって再興された九谷焼のスタイルは、緑色を基調とした独特の色使いが特徴です。自然モチーフの色絵九谷が有名です。

3. 上出長右衛門窯

260年以上続く伝統的な窯元で、九谷焼の伝統技法を守りながら、現代アートとの融合を追求しています。斬新なデザインと伝統的な技術を組み合わせた作品が特徴です。

現在の世界的な評価

九谷焼は、日本を代表する伝統工芸品として、国内外で高く評価されています。美術的価値と実用性を兼ね備えた作品が多く、特に上絵付けの技法は世界的にも珍しいものです。九谷焼は、アートギャラリーや博物館でも展示され、ヨーロッパやアメリカなどでも多くの愛好者がいます。九谷焼は、日本の芸術的な陶磁器文化を象徴する存在です。



ページトップに戻る