head_img_slim
日本の伝統工芸TOP > 伝統工芸品辞典 > 南部箒(岩手県)

南部箒(岩手県)とは?

南部箒(ふりがな: なんぶほうき、英語: Nambu Broom、仏語: Balai de Nambu)は、岩手県で生産される伝統的な箒で、ホウキモロコシと呼ばれる植物を原料としています。江戸時代からの歴史を持ち、軽量かつ耐久性に優れた実用品として、日本各地で広く使われてきました。細かな職人技によって一つ一つ手作りされ、掃除道具としてだけでなく、インテリア工芸品としても評価されています。南部箒は、自然素材の美しさと実用性が融合した日本を代表する箒です。

南部箒の歴史と特徴

南部箒の歴史は、江戸時代にまで遡ります。当時、岩手県南部地方ではホウキモロコシが栽培され、箒の生産が始まりました。ホウキモロコシは、軽くて弾力があり耐久性に優れているため、南部地方の風土に合った実用的な箒として広く使われるようになりました。また、南部藩の支援も受け、地元の工芸品としての地位を確立しました。

南部箒の製作には、まずホウキモロコシを育てることから始まります。岩手の気候と土壌はこの植物の栽培に適しており、強い繊維を持つ上質な素材が育ちます。ホウキモロコシが成熟すると、刈り取り・乾燥し、その後手作業で箒に仕上げられます。

南部箒の特徴は、その丈夫さ軽さにあります。手作業でしっかりと編み込まれた穂は、柔軟性がありながらもしっかりとした弾力を持ち、床を傷つけずに効率よく掃除ができる点が評価されています。また、持ち手部分木製で丁寧に作られており、手に馴染む感触が特徴です。

さらに、南部箒は長く使える耐久性を持っており、適切に手入れをすれば10年以上使用できることもあります。自然素材で作られているため、環境にも優しい点が現代のエコ意識に合致しており、プラスチック製品にはない温かみが魅力です。

製作過程では、職人が一つ一つ手作業で編み込み、均一な穂先を作り出す技術が求められます。手作りのため同じ箒は二つとないという点も、南部箒の大きな魅力です。細部にわたる精巧な作りが、掃除道具としての機能性だけでなく、インテリアや贈答品としても評価される理由となっています。

また、南部箒は、江戸時代から続く伝統的な技法を守りながらも、現代のライフスタイルに合った新しいデザインも取り入れています。コンパクトなサイズの箒や、カラフルなデザインが登場し、現代の家庭や店舗でも愛用されています。

代表的な窯や工房

1. 田中箒製作所

田中箒製作所は、伝統的な南部箒の技術を受け継ぎながら、高品質な箒を作り続けている工房です。丈夫で長持ちする箒が特徴で、日常使いにも適した製品を多く生産しています。特に、軽量で扱いやすい点が評価されています。

2. 渡辺工房

渡辺工房は、伝統技術を守りつつ、現代的なデザインも取り入れた南部箒を製作しています。機能性美しさを兼ね備えた箒が特徴で、手作りならではの温かみが感じられる製品を多く手がけています。

3. 工房吉田

工房吉田は、熟練の職人が一つ一つ手作業で作り上げる箒が特徴の工房です。昔ながらの技法を守りながらも、モダンなインテリアに合うデザインを取り入れた製品を提供しており、高い耐久性実用性が人気です。

現在の世界的な評価

南部箒は、日本国内だけでなく海外でも高い評価を得ています。手作りの職人技天然素材による温かみが、自然派ライフスタイルを重視する人々に支持されています。また、環境に優しい製品としてエコ意識の高い市場でも人気が高まっており、伝統と機能性を兼ね備えた日本の工芸品として世界的に認知されています。


ページトップに戻る